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ミュージカル英語を和訳してます♡

ミュージカルCATS 英語歌詞和訳⑦ バストファージョーンズ

Ladies (Jennyanydots, Jellylorum, Bombalurina)
Bustopher Jones is not skin and bones
In fact, he's remarkably fat
He doesn't haunt pubs, he has eight or nine clubs
For he's the St. James's Street Cat!
バストファージョーンズは痩せぎすなんかじゃ無い
実の所、極めて太っちょ
彼がパブをうろつく事なんか無い
だって八つか九つものクラブを所有してるから
何たってセント・ジェームス通りの猫だもの

 

He's the cat we all greet as he walks down the street
In his coat of fastidious black
No commonplace mousers have such well-cut trousers
Or such an impeccable back
彼が上品な黒い外套を着て大通りを歩くと
誰もが挨拶をするの
あんなに仕立ての良いズボンを履いて
完璧にキマった後ろ姿の猫はいないわ

 

In the whole of St. James's the smartest of names is
The name of this Brummell of cats
And we're all of us proud to be nodded or bowed to
By Bustopher Jones in white spats
セント・ジェームスで一番ハイカラな名前
それはこの洒落者の名前
我々は皆誇らしく思うのよ、会釈やお辞儀をされたなら
あの真っ白な靴当てを付けたバストファージョーンズにね

 

Bustopher
My visits are occasional to the Senior Educational
And it is against the rules
For any one cat to belong both to that
And the Joint Superior Schools
「高等教育」への訪問は偶然の事だったのだよ
規律に反しているからね
どんな猫も掛け持ちは許されぬし
私は「優等学校」に所属しているのだから

 

For a similar reason when game is in season
I'm found not at Fox's but Blimp's
I am frequently seen at the gay Stage and Screen
Which is famous for winkles and shrimps
同じ理由で狩猟の季節には
「キツネ」ではなく「飛行船」にいますよ
それによく「楽しい芸能界」を訪れるのだ
あそこは貝とエビで有名だからね

 

In the season of venison, I give my ben'son
To the Pothunter's succulent bones
And just before noon's not a moment too soon
To drop in for a drink at the Drones
鹿肉が美味しい季節には
ジューシーな骨を出す 「賞金稼ぎ」の常連だし
それに正午前はちっとも早い時間じゃないのだよ
「雄蜜蜂」に立ち寄って一杯飲むのにはね

 

When I'm seen in a hurry, there's probably curry
At the Siamese or at the Glutton
If I look full of gloom, then I've lunched at the Tomb
On cabbage, rice pudding, and mutton
急いでいる様に見えたらきっとカレーを食べるのさ
「シャム」か「大食漢」で
もし憂鬱そうな顔の時は「墓場」で昼食を取ったのだ
キャベツとライスプディングと羊肉の

 

ALL
In the whole of St. James's is the smartest of names
Is the name of this Brummel of cats
And we're all of us proud to be nodded or bowed to
By Bustopher Jones in white
Bustopher Jones in white
Bustopher Jones in white spats
セント・ジェームスで一番ハイカラな名前
それはこの洒落者の名前
我々は皆誇らしく思うのよ、会釈やお辞儀をされたなら
あの真っ白な靴当てを付けたバストファージョーンズにね

 

Jennyanydots
So, much in this way passes Bustopher's day
At one club or another he's found
It can be no surprise that under our eyes
He has grown unmistakably round
He's a twenty-five pounder -
こんな調子で彼の一日は過ぎていく
どこかのクラブかまた別のクラブへ
だから全く不思議じゃ無いの、傍から見ても
彼は見間違えようもなくまん丸になっていく
体重は25ポンド

 

Bustopher
- or I am a bounder!
- よく弾みますよ!

 

Jennyanydots
And he's putting on weight everyday
毎日増えていくの

 

Bustopher
But I'm so well preserved because I've observed
All my life a routine, and I'd say
I am still in my prime, I shall last out me time
しかし私はとても健康そのもの
日々規則正しい生活を遵守しているからね
だからまだ男盛りと言えるさ、そして間違いなくこれからも

 

Jennyanydots
That's the word from the stoutest of cats
それがあの太っちょ猫の誓いの言葉!

 

ALL
It must and it shall be spring in Pall Mall
While Bustopher Jones wears white
Bustopher Jones wears white
Bustopher Jones wears white spats
絶対必ずこれからも、パルマル街の栄華は続くよ
あのバストファージョーンズが真っ白な靴当てを付けている間は

 

Bustopher
Toodle Pip
さよなら!

 

 

解説

イギリスの社交クラブ

バストファーは一流の企業や商店が建ち並ぶ事で知られるセントジェームス通りの猫。社交クラブ街として有名なパルマル街に「優等学校」「キツネ」 「飛行船」など数々のクラブを設立し、毎日クラブをはしごしては美食に耽る太っちょ猫です(バストファーの台詞中の括弧表記は全てクラブ名です)。

ここで言うクラブとはもちろんディスコの事では無く、会員制の社交クラブのこと。趣味や嗜好の同じ仲間同士がクラブ・ハウスと呼ばれる邸宅に集まり社交を楽しみます。クラブ・ハウスには使用人が仕え、まるで我が家の様に食事や飲酒をすることも出来ます。

もともとは誰でも出入り自由な形式だったそうですが、産業革命以降に台頭した中産階級市民の間でクラブ活動が流行し、クラブ・ハウスと呼ばれる邸宅に集まる形式が多くなりました。19世紀に書かれた小説、シャーロックホームズの中にも、シャーロックが「ディオゲネス・クラブ」というクラブで寛ぐ様子が描かれています。

シャーロックが所属する社交クラブは人嫌いの紳士の為に創立されたので、会員はクラブ・ハウス内で無言を貫かなくてはなりません。この様に各クラブには様々な規則や趣向が存在し、政治家や知識層向け、競馬のオーナーしか入れないクラブや農家向けのクラブなど種類も様々。この歌の主人公バストファーが設立したのは美食が趣向のクラブの様で、クラブ名と共に様々な食べ物が紹介されています。

 

 

バストファーのクラブ紹介は皮肉がいっぱい

バストファーが挙げるクラブ名や食べ物名の多くが、ちょっと皮肉の効いた掛詞(ダブル・ミーニング)になっているのもポイントです。 

例えば以下の歌詞 

Bustopher
For a similar reason when game is in season
I'm found not at Fox's but Blimp's
I am frequently seen at the gay Stage and Screen
Which is famous for winkles and shrimps
同じ理由で狩猟の季節には
「キツネ」ではなく「飛行船」にいますよ
それによく「楽しい芸能界」を訪れるのだ
あそこはエビで有名だからね

ここでfoxは「キツネ」という意味の他に「卑怯者」。blimpは元々は「飛行船」という意味ですが、英国俗語で「太った人」という意味があります。またgayという形容詞は「楽しい、陽気な」といった意味の他に「放埒な、奔放な」という意味が含まれており、またwinkleは「貝」と「時代遅れな人」、shrimpは「小エビ」の他に「取るに足らない小物」という意味があります。それを活かすと、以下の日本語訳になります。

Bustopher
For a similar reason when game is in season
I'm found not at Fox's but Blimp's
I am frequently seen at the gay Stage and Screen
Which is famous for winkles and shrimps

同じ理由で狩猟の季節には
「卑怯者」ではなく「太っちょ」にいますよ
それによく「放蕩な芸能界」を訪れるのだ
あそこは時代遅れな奴取るに足らない奴で有名だからね 

Stageは舞台、Screenは映画なので、Stage and Screenで芸能界と訳しています。芸能界は時代遅れな奴と小物でいっぱい!という歌詞がミュージカルの中で歌われるというところが、すごく皮肉が効いていますね(ある意味イギリスっぽいかも?)

 

また、続けて歌われる次の歌詞にもダブル・ミーニングが含まれています。

Bustopher
In the season of venison, I give my ben'son
To the Pothunter's succulent bones
And just before noon's not a moment too soon
To drop in for a drink at the Drones
鹿肉が美味しい季節には
ジューシーな骨を出す 「賞金稼ぎ」の常連だし
それに正午前はちっとも早い時間じゃないのだよ
「雄蜜蜂」に立ち寄って一杯飲むのにはね

Pothunterのpotには手当たり次第の射撃という意味があり、hunterは猟師。併せてPot hunterでルールを無視して手当たり次第に撃つ「乱猟家」という意味になります。

またDroneは日本語で読むとドローン。近年何かと話題になる小型の無人飛行機もドローンと呼びますが、「オスの蜜蜂」が語源です。蜜蜂はほとんどがメスで構成された超女社会。ほんの少しだけ生まれるオスは女王バチと交尾し子孫を残す為だけに存在し、いつも巣の中でエサを食べてぐうたらしています。そこからDroneには「オスの蜜蜂」という意味の他に「怠け者」という意味があります。

それらの意味を踏まえると、こんな歌詞に変わります。

Bustopher
In the season of venison, I give my ben'son
To the Pothunter's succulent bones
And just before noon's not a moment too soon
To drop in for a drink at the Drones

鹿肉が美味しい季節には
ジューシーな骨を出す 「乱猟家」の常連だし
それに正午前はちっとも早い時間じゃないのだよ
「怠け者」に立ち寄って一杯飲むのにはね

「乱猟家」が狩った鹿の肉を食べて、正午前に一杯ひっかけるのは「怠け者」。後者に至っては言っている事が逆になっていて面白いですね。 

 

英単語メモ

In fact:実のところ
remarkably:際だって、目立って
haunt :よく訪れる
St. James's Street: 一流企業や老舗が集まることで知られる ロンドン中心部の通りの名前
greet:挨拶する
fastidious:細心の注意を払った
commonplace:平凡な
mouser:ネズミを捕る動物
well-cut:仕立ての良い
impeccable:非の打ち所の無い
smart:当世風の、流行の
Brummell: リージェンシー時代にイギリスの社交界で男性ファションの権威とされたジョージ・ブライアン・ブラメルのこと
proud to:~できて光栄だ、~であることを誇りに思う
nod:会釈する
spats:スパッツ。足首を汚れから守るために靴の上から装着する脚絆の様な物で、和製英語で言うところのスパッツとは別物
occasional: 臨時の
senior:最上級の
belong:属する
superior:上級の
similar:類似の
game:狩猟
not A but B:AではなくむしろB
fox:キツネという意味の他に、狡猾な人という意味もある
Blimp:飛行船、(英国俗語で)太った人
gay:陽気な、放蕩な
winkle: タマビキ貝(食用の小さな貝の名前)。また1820年にワシントン・アーヴィングによって書かれた短編小説の中に登場するアメリカ版浦島太郎、リップ・ヴァン・ウィンクルのことを指す。転じて、アメリカ英語では時代遅れの人を意味する
shrimp:エビという意味の他に、取るに足らない者という意味もある
venison:鹿の肉
ben'son:benisonの略?祝福
Pothunter:賞金稼ぎ。またpotは手当たり次第の射撃を意味し、pot hunterで乱猟家という意味もある
succulent:ジューシーな
just before:直前
noon:正午
drop in:ちょっと立ち寄る
drone:(いつも巣にいて働かない)ミツバチの雄、転じて怠け者という意味
In a hurry:急いで
probably:おそらく(80%くらいの高い確率で起こり得る)
Siamese:シャム人、シャム語(シャムはタイ王国の昔の呼び名)
Glutton:大食家
gloom:憂鬱な気分
lunch:昼食を取る
tomb:墓地
mutton:羊肉(子羊の肉はlambと言い単語が異なる)
unmistakably:紛う方無く
round:丸くなった
pounder:(重量が)~ポンドある
twenty-five pounder:25ポンド=約11.3キログラム
bounder:飛んだり跳ねたりするもの
put on weight:体重が増える
preserve:維持する、保つ
observe:遵守する
routine:慣例
prime:全盛、壮年期
shall:必ずそうなる(それが神の意志であるかの様に確実である)。ちなみに歌詞中では"It must and it shall be~"と似た意味の単語を二重に使って「絶対」「必ず」を強調しています
last out my time:損なわれない
word:約束、誓言
stout:恰幅の良い
must:絶対~に違いない(99%確実である)
spring:春、活力
Pall Mall:パルマル街。ロンドンのトラファルガー広場からセントジェームス宮殿に至る街路で、クラブ街として有名
Toodle Pip:英国俗語で「さよなら」や「じゃあね」の意味